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撚り糸テーパーラインの考察1

軽いトバシ糸

今となっては撚り糸テーパーライン(昔はトバシ糸といわれていた)が公に語られる機会は少なくなった。それ故に誤った情報や偏った見識が散見されるのも事実。もっともそれらの情報が撚り糸に精通するテンカラ師による発信でないともすればその信憑性は疑われて当然のこと。

その代表的なものといえば重い撚り糸に起こる「オツリ現象」ではないだろうか。

撚り糸テーパーラインは市販品で出回っているもののバリエーションが極端に少なく、たまたま情報発信者が手にしてきたものがフロロ素材などの重いものばかりであったとするならばそのような端的な評価を受けるのも致し方ないこと。中には馬の尻毛を束ねて撚った非常に重い「馬素時代」の話をしているケースさえある。

レベルラインとの重さの比較

ここでまず「撚り糸は重い」というそもそもの誤解を解かなくてはいけない。

撚り糸テーパーラインには細く軽く作られたものも存在するということ。

3枚の写真を見ていただくとわかるとおり私が手撚りした撚り糸とレベルラインフロロ3号のそれぞれ1mあたりの重さはほとんど変わらないのである。


 撚り糸テーパーラインの真実である。とはいえ軽ければ軽いほどに優れているという話ではないので実際にはレベルライン同等に軽くして作られることは稀なことではある。

当たり前のことではあるが本来撚り糸テーパーラインというものは幾通りもの種類が存在する。元になる素材の太さ重さ硬さ、撚りの本数。それにテーパーのかけ具合が加わり釣り場に合わせて最適な加減で作られているのである。

以下にフロロカーボン製、ナイロン製、馬尻毛製の3種類を並べてみた。

様々な素材の撚り糸テーパーライン

フロロ撚り糸4m

1.3g÷4m=0.325

極細ナイロン撚り糸5.5m

0.98g÷5.5m=0.178g

馬尻毛撚り糸3.3m

1.77g÷3.3=0.536g


手持ちのもので急遽写真を撮ったのでそれぞれの長さが違うというご指摘は承知の上であるが、長さで割った数字を比べれば多少の参考にはなるかと思う。

これが「重さが、、、オツリが、、、」と単一的に評価されてきた撚り糸テーパーラインの実際の姿である。誰が言い始めたかわからない評価(wikiにまで、、、)なんていうのは実にいい加減なものである。もっとも釣り人の間でフロロカーボンラインが流行したことにより市販品の多くがフロロ素材でつくられたことで「重い」というイメージが定着したとも考えられる。

 

フロロ、ナイロン、とそれぞれの素材がもつ利点、欠点を考えて使い分けたい。

フロロ製は同等の太さで比べたときに重さがあるので強風などの条件下で頼りになる。しかし硬くゴワつくことや撚り糸の持ち味である伸縮性やわらかさも少ないため魚のアタリを弾いてしまい掛かりが悪いなどの問題がある。手感度のアタリを大事にする餌釣りやルアー釣りなどでは伸びの少ないフロロが好まれるともいわれているが、テンカラ釣りにおいては手感=違和感なのでフッキング率が著しく低下する。

ナイロン製はフロロよりも軽いというだけでなく柔らかさ、しなやかさ、伸縮性に注目したい。私の経験ではしなやかで綺麗に飛び、フッキング率が良くバラしも少ないのがナイロンである。本流のダウンキャストの釣りや、アワセが非常に難しいといわれているオイカワの毛鉤釣り(オランダのことではない)を経験している方は想像できると思うが、ラインの柔らかさはとても重要なのである。

軽くて飛ぶのか

ここで一つの疑問が生まれる。

「軽いナイロン製の撚り糸は綺麗に飛ぶのかということ」

答えは「飛ぶ」である。撚り糸の持つ回転力やテーパー形状の効果で軽くても驚くほどビシッと飛ぶのである。

重さの比較で用いた極細ナイロン撚り糸5.5mを使ったキャスティング動画。

こちら↓

軽いトバシ糸ならばオツリが少ないのは敢えていうまでもなく、わずかにオツリ現象が生じる時は却って羽虫が水面を滑り転げる様を演じるのに利用された。ラインを自在に操り毛鉤を本物の虫のように動かし魚を誘い出す。さらに技術的に踏み込んでいけばオツリを出すも出さないも自在なのである。

昔は個人経営の釣具屋などに行けば店主お手製の軽いトバシ糸が毛鉤と並んで売られていたなんていう話はよく聞くし、手練れのテンカラ師ほど手撚りのトバシ糸に拘りをもっていたとも聞く。

 

DaisukeTsuchiya